役者のはなし

昨今はSNSもあって、良くも悪くも情報が瞬時に発信される時代です。その日にあった出来事をその日のうちに知ることができるのもSNSのなせる技です。一人の俳優が自死したニュースがもたらされました。

俳優(役者)とは表現者です。モノを作る職人とか、モノを売る商売人とか、サービスを提供する人とも違います。虚構の世界の住人となり人々になんらかのメッセージを発信するエンターテイナーです。

THE HEADの記事で、木村拓哉や山下智久が、何の役をやっても本人にしか見えないことに触れました。彼らはアイドルですから、同じエンターテインメントでもお芝居の比重がそれほどありません。片手間・・・と言っては失礼かもしれませんが、それくらいの向き合い方なのでしょう。その作品が終われば楽しく打ち上げでもして通常の生活です。

自死した若い俳優は、憑依と呼べるほど役にのめり込み、作品が終わっても役が抜けなくて鬱になるという記事を見ました。子供の頃から役者という環境にあり、若くして数々の作品に出演し主役もはり、爽やかな風貌と立ち居振る舞いで人気を得ました。これが外側から見た俳優の側面です。その内側に何があるかは市井の人々にはわかりません。

歌手や役者なんか河原乞食だ。

その昔、父親からこのように言われたことがあります。歌舞伎の起源は京都の四条河原町と言われています。歌舞伎役者を卑しめて「河原乞食」と呼んでいたそうな。手に職を持たず芸を売って生計を立てる役者は、そのように扱われていたのかもしれません。職もなく金もないから芸を売り、僅かなおあしを恵んでもらってその日を生きていた、いわゆる旅芸人のような人もいました。伊豆の踊り子も旅芸人、越後獅子というのもあります。白拍子というのも現代における俳優と言えるでしょう。どちらにしても身分はたいそう低かったのです。

今日では役者はスターです。

しかし、星も深い暗闇の中にあり、輝くほど闇が深いのかもしれません。

合掌

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